これからの花と緑のまちづくりと園芸の進化 3

1.園芸とは国民生活の中で、情操を育む主軸

国際的に見て園芸は趣味の領域でなく、暮らしの中の主軸とされている。アメリカでは、約70年前にヒューストン大学において小学3年生時に野菜を学校園と並行して、地域専門員により児童園で実践教育が行われ、体系化された。現在では全米に普及し、カナダにも波及しているのである。野菜づくりの種まき、苗づくり、土づくり、堆肥づくりのいずれも基本から体得している。土づくりに大きく寄与する「ミミズ」の働きはシンボル化されている。この実践教育に当たっては、甘えが加わるとしつけにならないので、両親は一切介入しない。そして児童たちは、これらの野菜をすべて家庭に持ち帰り、今度は母親から家庭料理を習うのである。

一方中国の雲南省の省都・昆明市では、市民に盆栽づくりと書道が推奨されている。昆明市では、市内で共有する花壇は市民参加で見事に管理されているが、個々の家庭では窓辺にも庭先にも花は置かない。共同住宅が多く、すべてにサンルームが付いていてその中で、常緑のガジュマルを使って家族全員が各々の鉢を割当てて、盆栽を管理しているのである。そして書道は、共有の間に家族の誰でもが直ぐに創作できるよう十分な場所を定めているのがふつうである。このように盆栽づくりも書道も人々の情操を育むものとして市民生活に根付いている。

野菜実習展示園
ドイツ・アウグスブルク植物園

キッチンガーデン
フランス・ビランドリー

野菜展示園
カナダ・モントリオール植物園

カナダ、オーストラリア等では、ガーデンセンターに大抵、子供のための園芸実習場がある。店の専門員が、苗をポットに植える手法、水やり、土づくりの基本を教え、家庭に持ち帰る仕組になっている。また保育室や運動場を備え、店の職員が保育する仕組みもある。その間親たちは、研修室で専門員からガーデニングを勉強するという、ガーデニングを重視した生活のサイクルができあがっているのである。幼稚園や学校においても当然学習のための庭の管理や手法を教えている。このようにガーデニングといっても人づくりあってのことで、しかも高齢者を含めて、年齢を問わないすべての段階の取り組みにより、立派に社会を生き抜くための社会園芸が確立されている。

幼児とミニトマトを植える
’06ひょうごまちなみガーデンショーにて

小学生を対象にしたガーデンセンターの実習場
カナダ・トロント

2.情緒豊かなまちづくりに園芸及び造園が果たす役割

まず花と緑のまちづくりには、個性及び情緒豊かで整然とした取り組みを官民一体で果たしていくことが必要である。特に野菜や小果実の栽培を取り入れる必要があると思われ、ニュージーランドでは全体の25%、アメリカ、カナダなどは30%、ドイツでは40%が取り入れている。一例として、ドイツ・アウグスブルグ市の植物園では、市民が取り組む野菜園、果樹園が入口近くにあり、野菜や果樹の種類、土づくり、栽培の過程が理解できるようになっている。そしてそれは全体の敷地の実に40%を占めている。これら教育園の充実している最も良い例は、カナダのモントリオール植物園、アメリカのシカゴ植物園とニューヨーク植物園である。このように、人間の六根、六境(六感)に訴え、叶うようなガーデニングの仕組、役割を構築すべきなのである。

次に、情緒を育むためには景観づくりも近視的でなく、総合的な見知でもって官民一体で取り組む必要がある。花と緑だけでなく水辺、そして魚や小鳥、蝶なども含めた爽快なまちづくりが急務である。島根県津和野町の殿町通りには、長い道路沿いの水路に錦鯉が遊泳している。このことは岐阜県高山市吉川町、佐賀県佐賀市にもみられる。さて、水辺となれば池沼の情景にも工夫が大切であり、カナダ・モントリオール市では、日本のススキやアフリカ産のイネ科ペニセツムがうまく植え込まれて、情緒的な景観をつくっている。歌にもあるリンデン(セイヨウボダイジュ)とその並木は西洋で最も多くみられるが、近年日本でもリンデンが普及し、神戸市のトアロードにも200本の並木が見事に生長している。同じ仲間であるシナノキは香りも樹形も良く県北一帯に自生している。「愛」のシンボルでもあるこのリンデンは、世界各都市の庭や森をつくっていることで有名である。

ススキ、ベニセツムを植栽した池辺
カナダ・モントリオール植物園

情緒のある殿町通りの小川の情景
島根県・津和野町

美しいリンデンの並木
オランダ

さて、花壇といっても種々あるが、芝生の中に宿根草や花木を点植させて成功している例もある。かつて大阪の花博で海外の方々に最も人気のあったのは谷間の花壇であった。和風であり情緒的である。都会ではこうした田園風の花壇デザインも今後は取り入れたい。またヨーロッパでは、石碑や銅像、噴水といったアクセントに花壇がサポートする例も多い。ウィーン市民公園にある、ヨハン・シュトラウス2世の黄金に塗った銅像の前花壇は、公園を引き締めるのに一役買っている。

最後に、日本でも地域ぐるみで取り組まれたらよいと考えられるのは、中国式の大型盆栽である。写真は昆明市の例であるが、使っているのはガジュマルであり、本県においては、ウンリュウツゲ、モチノキ、ギンマサキ、ベニシタン等を使って試みると楽しく、力強いポイントになるのではないだろうか。

ガジュマルの大型盆栽
中国・昆明市

平成20年(2008年)1月 花緑センターだより 3号より

次の記事

これからの花と緑のまちづくりと園芸の進化 4

花緑センターだより

花と緑のまちづくりセンターでは、県民の花と緑への関心をより高めるため、花と緑のまちづくりの普及啓発の一環として広報誌「花緑センターだより」を平成19年から令和4年まで年4回発刊していました。
また、花と緑のまちづくりセンターの前身である「緑の相談所」の広報誌「緑の相談所だより」は平成17年、18年の2年間、発刊していました。
主要記事はWEBでも公開しています。
現在は、公式サイトのカテゴリー「花緑センターだより」として、引き継いでいます。
バックナンバーはすべてPDFファイルでご覧いただけます。花緑センターだより(創刊号~最終号PDF)