これからの花と緑のまちづくりと園芸の進化 1
技術顧問 藤岡作太郎
1.新しいガーデンシティの創造と条件
21世紀になってから求められる花と緑のまちづくりの条件は、前世紀までとかなり変貌しているといえる。それは草花や樹木を植栽して美観を整えるだけでなく、まず防災安全を配慮した仕組が大切だということである。そのことは阪神淡路大震災で多くのことを学ぶことができた。例えば美しい庭づくりのためでなく、住宅の倒壊をかなりくい止める庭木を使ったり、燃えにくい生垣を植栽すること。さらに反省点としては、余りにも街そのものに水路がなさすぎることである。欧米では、水都以外でも水辺の創造を先んじているのである。国内でも素晴らしいモデルはある。飛騨の古川や島根県の津和野の掘割や規模の大きな堀割として佐賀市がある。江戸初期に時の城主・鍋島公の大英断で、街の縦横に大堀割が巡らされているのである。今日の佐賀市は、防災だけでなく、汚水浄化のためにシュロカヤツリグサやセキショウを水辺に植栽することで、水質は美しくなる研究と実践が進んでいる。隣県の熊本市も同じ施策を取り入れているし、海外まで波及し、オーストラリアのメルボルン、首都キャンベラ市も同様に汚水の浄化を同様の植栽が応用されているのである。

一方燃えにくい防災樹については、先の震災であのクスノキまでが防災に役立ったことが目のあたり見とどけた。このことは、兵庫県でこれまた江戸の初期に姫路の本多公と明石城主の小笠原公の英知が反映して、播州一円の民家の前に「播州五木」としてカシ、モッコク、モチノキ、ヒイラギナンテンなど、また出石城主は更にタプ、タラヨウなどを加えた施策がなされ、今も随所に残っているのである。
ヨーロッパでは街のシンボルとして、まず小公園を盛んにつくってきた経過がある。愛のシンボル、リンデンでホフ(中庭の意味)のあるチューリッヒ、オランダのキューケンホフ、プラハ、ベルリンの大並木など街づくりには永続する恒久性のある緑の創出を優先している。シナノキを加えたリンデンホフ、カエデ類のメイプルホフ、カツラホフなど日本ならではの基本的なガーデンシティの要創造をまず行わなければなるまい。
次に人々の暮らしには、六感を植物に求め充足することをもっと強調すべきだと信じる。日本の原典の一つとも言える般若心経には六根清浄、六境の調和を生きる原典においている。視覚だけにとらわれすぎる施策より、香り、音楽、せせらぎ、呼鳥などの聴覚など六感を強調すべきである。六根清浄では、身のことと意(心)を求めている。園芸とは、趣味でなく幼児、少年期からの人間形成に取り入れるアメリカ、カナダに学んだ、社会園芸の必要性は、子供たちの情緒を育み、健康面での肥満や体質改善と併せ、非行、犯罪防止に寄与する大英断を早急にとらなければならない。学校園だけでなく、地域のリーダーによる児童園を創設して、健全な県政に反映することが先決であろう。

2.暮らしの実態に反映した園芸の一つに夜に咲き夜に香る植物育成への目覚め
万葉集にも詠われているように植物には夏場に多い、夜咲き、夜に香る草花は随分多い。淡路花博で成功したナイトガーデンも、人々の情緒を育む深みのある目覚めをガーデニングに求める一つのきっかけにしてはどうなのか。ユウガオ、クレオメ、オシロイバナ、ヘチマ、ヒョウタン、コダチ性チョウセンアサガオ(ダツラ)、ヤコウボク、サンユウカ、ジャスミン類、ハマナス、ハマユウと素晴らしい香りが夕暮れから夜にかけて、庭やベランダで放ってくれるのである。ナイターは、サッカーや野球だけでなく、私たちの狭い小庭やベランダで演出できる。寝静まるまでの時間にスポットライトを近隣に迷惑のかからない範囲で照らし、夜咲き香る素晴らしいロマンティックな世界のあることを知ることは、情緒を育くむきっかけとして、今夏やってみることをお奨めする。4時に咲く花としてありふれてはいるがオシロイバナがあるし、時刻を告げてくれるヤコウボクは、瀬戸内では7時になると香り始めるのである。香りが人々の心をなごまし、元気づけることは古い歴史の中にあった。日本の香りの文化は遠く聖徳太子の時代に、南方から紀淡海峡を北に向い兵庫県の淡路島に辿り着いた流木に始まる。ときの漁夫たちが浜辺で流木で焚火をしていると素晴らしい香りが放ち重宝に、ときの宮内庁聖徳太子に献上したと「日本書紀」に明記されているのである。いわゆる沈香で、まさに日本文化の発祥は淡路島だったのである。今日普及している西洋のハーブは燃やすと、天上向いて香りが昇るが、東洋の香りは床に向ってたなびくことを知ってほしい。東洋の五香木とは沈香、乳香、白檀、安息香、天台烏薬である。この中で、この夏場の時期に植木として宝塚の山本あたりで手にすることができるのは、天台烏薬だけである。日本に帰化し、紀伊半島にかなり見られるようであり、植木として販売もしている。

香りは、私たちの健康に欠くことは出来ない。六感とは、視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚、情緒(心)であり、六根清浄とは般若心経では無眼、耳、鼻、舌、身、意とあり、六境とは無色、声、香、味、触、法となっている。これらを調和したガーデニングに取り組む具体性と、これを手法として花と緑のまちづくりの理念を体系づけることが大切なのである。古くからの教えは、20世紀に入って薄れたかとも考えられるが、姿、形、色だけを究める片寄った単純な考え方は、私たちの心身共に健やかな生き方とは言えないのである。とりあえず、真夏の夜の夢でなく、真夏ならこと味わってほしい夜に咲き香る。ナイトガーデニングに目覚める。

平成19年(2007年)7月 花緑センターだより 1号より
花緑センターだより
花と緑のまちづくりセンターでは、県民の花と緑への関心をより高めるため、花と緑のまちづくりの普及啓発の一環として広報誌「花緑センターだより」を平成19年から令和4年まで年4回発刊していました。
また、花と緑のまちづくりセンターの前身である「緑の相談所」の広報誌「緑の相談所だより」は平成17年、18年の2年間、発刊していました。
主要記事はWEBでも公開しています。
現在は、公式サイトのカテゴリー「花緑センターだより」として、引き継いでいます。
バックナンバーはすべてPDFファイルでご覧いただけます。花緑センターだより(創刊号~最終号PDF)

