意外に知らない「身近な植物英語」から考えるまちづくり 3

第三回
「セミナー、カルチャー、サクセッション」

兵庫県立淡路景観園芸学校
主任景観園芸専門員平田富士男

●私たちの生活のなかの花みどり英語

花みどりの英語第三回は、「セミナー、カルチャー、サクセッション」をとりあげてみましょう。

まず、「セミナー(seminar)」という言葉ですが、これは「講座や教室」の意味でよく耳にします。しかしこの言葉は「semen:種」という言葉から来ています。これに「arium:場所」という言葉が付いて、さらに短くなったのが「seminar」です。ですから元々の意味は「種を育てる場所=苗床」ですね。現在「seminar」自身に苗床の意味はもうないようですが、辞書を見ると「seminary=育成場所、温床」、「seminal=種の、繁殖のという表記はまだ出てきます。たしかに「セミナー」は人を「育てる」場所ですね。

次に「culture」ですが、これも一般的には「文化」と訳されますが、元々は「cultivate=耕す」の名詞形ですから、辞書をよく見ると「栽培、耕作」などの訳が見あたります。

むしろこちらの方が原義に近いでしょう。ですから、園芸の英訳「horticulture(ホーティカルチャー)」も、農業の英訳「agricultureまちでよくみかける農協のJAマーク(アグリカルチャー)」もちゃんとcultureがついていますね。農協の愛称「JA」は「JapanAgriculturalCooperatives」の頭文字から来ています。植物と同じように、seminarで人間の頭を育てれば、そこにcultureが根付く、というわけです。

最後の「サクセッション(succession)」ですが、これは前の二者に比べればお目にかかることは少ないかも知れません。しかし、私などはこの言葉を聞くとすぐ忌野清四郎さんが率いるロックバンド「RCサクセッション」を思い出してしまうのです。皆さんはいかがですか。今回、彼がバンド名になぜこのサクセッションをつけたのか、を調べてみたところ、新しくこのバンドを立ち上げたときに、前に所属していたRとCがつくバンドの音楽性を「受け継ぐもの」としてこのサクセッションをつけたそうです。バンド名として単なる語呂の良さからだけなのではなく、深い意味があったのです。植物学の世界では、このサクセッションを植生の「遷移(移り変わり)」という意味で用いますが、その植生は極相(英語では「climax(クライマックス)」)に向かって遷移していき、そこで安定するのです。

●まちづくりに関わる人を発掘し、育て、次に引き継いでいく

さて、このように見ると私たちがふだん何気なく耳にしている「セミナー、カルチャー、サクセッション」は人間がいかに緑を育てていこうとしているか、そして緑がいかにして生をつないでいこうとしているかを示しています。つまり、人間はsemenという種を苗床で大事に育て、耕し、栽培し、大きくしていきますが、重要なのは単体の植物の生育だけではなく植物の集合体、つまり植物の社会がずっと受け継がれていく、ということなのです。まちづくり活動も、最初はたったひとりの活動から始まるのでしょうが重要なのはたとえひとつでもその種をみんなで育成し、まちや地域全体の活動として発展させるとともに、その活動を持続的なものにしていくためのサクセッションの仕組みや仕掛けを常に考えていくことなのでしょう。まちづくり活動も植生のようにサクセッションさせ、そしてクライマックスを迎えるようにもっていくことが重要なのです。

さて、次の最終回は少し植物から離れ「チャリティー、サービス、ボランティア」を考えてみたいと思います。

平成21年(2009年)1月 花緑センターだより 6号より

花緑センターだより

花と緑のまちづくりセンターでは、県民の花と緑への関心をより高めるため、花と緑のまちづくりの普及啓発の一環として広報誌「花緑センターだより」を平成19年から令和4年まで年4回発刊していました。
また、花と緑のまちづくりセンターの前身である「緑の相談所」の広報誌「緑の相談所だより」は平成17年、18年の2年間、発刊していました。
主要記事はWEBでも公開しています。
現在は、公式サイトのカテゴリー「花緑センターだより」として、引き継いでいます。
バックナンバーはすべてPDFファイルでご覧いただけます。花緑センターだより(創刊号~最終号PDF)