意外に知らない「身近な植物英語」から考えるまちづくり 1

第一回
「ハイブリッド、パラサイト、シンビオシス」

兵庫県立淡路景観園芸学校
主任景観園芸専門員平田富士男

●花みどりの英語

今や、私たちの身の回りにはたくさんの外来語があふれています。しかもそのなかには花や緑に関するものもたくさんあります。ところが、それらには別の用法が一般化していて、もともとは植物に由来する言葉と認識されなくなっているものもあるようです。

しかし、そのような言葉の原義には、私たちの社会におけるまちづくりのあり方を示唆するものがあるのではないでしょうか。なぜなら、植物も人間と同じく社会のなかで、いや他の生き物を含めた生態系のなかでしっかりと生きていっているからです。ですから、その生き様を表す言葉には、きっとそのようなものが含まれているにちがいありません。そんな言葉の元の意味をたどりつつ、まちづくりを考えてみたいと思っているのです。

●ハイブリッド、パラサイト、シンビオシス

さて、今回とりあげたのは「ハイブリッド、パラサイト、シンビオシス」です。まずハイブリッドは、「ハイブリッド車」という環境にやさしい車の名前としてよく耳にします。パラサイトは、「パラサイトシングル」のように家庭問題を論じるなかでこれもよく耳にします。シンビオシスは、前二者と比べるとその言葉を聞く機会はぐっと少ないですが、「協調」のイメージがあるので会社や音楽グループの名前としても時々聞きます。

しかし、それらの元々の意味は、ハイブリッド=雑種、交雑種、パラサイト=寄生生物、シンビオシス=共生という生物学用語なのです。ふだん使用する言葉のイメージと少し違うな、とお感じになりませんか。特にハイブリッド車が「雑種車」というのはイメージとしてはあまりよくないですね。しかし、ハイブリッド(交雑)には、必ずしも純血種に対する犬の雑種のようにネガティブな意味だけではなく、「違う要素を組み合わせることで、より優れた性質を生み出すこと」と言う意味があり、ガソリンエンジンと電動モーターの両方を搭載した車に用いられているのは、そこへの期待が込められているのだと思います。事実、植物では異種の交雑によって、互いの優れた性質を併せ持つようなものが多く生み出されてきました。植物は生存競争のなかでパラサイト(寄生)によって生き延びようとしたものもありましたが、シンビオシス(共生)によって「ともに」生き延びようとしたものも現れました。そして、人は二つのちがうものをつなぐことによってさらに優れた別の特性ができることを発見しハイブリッドを作り出したのです。

●まちづくりもハイブリッドに

さて、まちづくりも隣人や行政にパラサイトすることだけを考えていてはいいものができるわけがありません。競争社会、格差社会ではなく、いくつかの生物同士が築いてきたような互いの利益を享受しあうような「シンビオシス(相利共生関係)」なまちを目指さなくてはなりません。そして、そこからさらに人と人との交流が密になっていけば、新しいアイデアや取り組みが生まれる「ハイブリッドな」まちづくり活動となるのです。そのようなハイブリッドなまちづくり活動を花と緑を媒体としてあちこちに起こしていきたいものですね。さて、次回は「セル、シーズ、ジェネリック」を考えてみましょう。

平成20年(2008年)7月 花緑センターだより 5号より

花緑センターだより

花と緑のまちづくりセンターでは、県民の花と緑への関心をより高めるため、花と緑のまちづくりの普及啓発の一環として広報誌「花緑センターだより」を平成19年から令和4年まで年4回発刊していました。
また、花と緑のまちづくりセンターの前身である「緑の相談所」の広報誌「緑の相談所だより」は平成17年、18年の2年間、発刊していました。
主要記事はWEBでも公開しています。
現在は、公式サイトのカテゴリー「花緑センターだより」として、引き継いでいます。
バックナンバーはすべてPDFファイルでご覧いただけます。花緑センターだより(創刊号~最終号PDF)