都市に森をつくる 

兵庫県立大学教授 田原 直樹

都市生活の装置としての都市林 

都市に良好な自然環境を形成するためにつくられる大規模な公園は、都市林あるいは都市の森などと呼ばれます。音楽で名高いウィーンの森は、中に農地や集落が散在し、神戸市がすっぽり入るほどですから、森と言うよりは地域を指すものと言えます。 こうしたものは別として、 世界にはみごとな都市林をもつ都市があります。 たとえば、 パリのブローニュの森は、 博物館や庭園を含む8平方キロメートル (甲子園球場の200倍以上)を超える広大な都市林です。園内には、有名なロンシャン競馬場やテニスの全仏オープンが開催されるローラン・ギャロスがあることでも知られています。人口200万人を超え、世界でも指折りの高密度な都市であるパリにとって、市民の暮らしに欠かせない都市生活の装置としての役割を果たしているのです。 

都市林は都市生活の質を保証するものであり、その存在は都市の格を示すものと言ってもよいのではないかと思います。 

都市林としての城守林 (きじゅりん

日本の都市は、欧米と比べて市民一人当たりの公園面積が少ないとされ、長らくその整備が課題となってきました。 都市林のような大規模な公園とは無縁な気がするのですが、 決してそんなことはありません。 日本の都市には、欧米の都市にはないユニークな森があるのです。 それは、かつての城下町の名残の城跡に見られる森で、多くの場合都心に位置すること、それでいてしばしば天然記念物に指定されるほど自然豊かな状態が保たれていることなど、一般的な公園とは違うユニークな特徴をそなえています。 この森を研究している稲飯幸代氏は、この森を日本の都市に固有の文化的な緑として扱う必要があるとし、 「城守林(きじゅりん)」と呼ぶことを提唱しています。 日本には城下町を起源とする都市は多く、全国47都道府県のうち、実に36の県庁の所在地が旧城下町です。城守林という都市林の存在自体が、日本の都市の特徴と言うこともできるでしょう。 

新たな都市林の創出-都市を蘇生させる森づくり 

愛媛県松山市の城山公園

城守林をはじめとする都市林がないところでは、どうすればいいのでしょうか。 大阪の千里にある万博公園(正式には日本万国博覧会記念公園)は、1970年に開催された日本万国博覧会を記念してつくられた公園ですが、およそ2.6平方キロメートルの広大な敷地には、人工的に創られたことが信じ難いような豊かな森が見られます。都市林は、私たちの手で創り出すことができるのです。尼崎の臨海部では、市民みずからの手で未来の都市林を育む試みが始まっています。 10平方キロメートルに及ぶ土地に、 水と緑豊かな自然環境を創出しようとする「尼崎21世紀の森構想」です。この構想は、都市再生プロジェクトの一環として、臨海部における緑の拠点の形成をねらって策定されたもので、森づくりによって都市を蘇生させようとする試みです。 森づくりは、自然と人が共生する環境共生型のまちづくりの重要なテーマと言えるでしょう。 

平成20年(2008年)1月 花緑センターだより 3号より

花緑センターだより

花と緑のまちづくりセンターでは、県民の花と緑への関心をより高めるため、花と緑のまちづくりの普及啓発の一環として広報誌「花緑センターだより」を平成19年から令和4年まで年4回発刊していました。
また、花と緑のまちづくりセンターの前身である「緑の相談所」の広報誌「緑の相談所だより」は平成17年、18年の2年間、発刊していました。
主要記事はWEBでも公開しています。
現在は、公式サイトのカテゴリー「花緑センターだより」として、引き継いでいます。
バックナンバーはすべてPDFファイルでご覧いただけます。花緑センターだより(創刊号~最終号PDF)