自然と建築の融合 第1回「ひょうごまちなみガーデンショー」を振り返って

武庫川女子大学 建築学部 景観建築学科 
教授 上町 あずさ

今年は「ひょうごまちなみガーデンショー」30回記念ということで、1993年~1996年に「ひょうごまちなみガーデンショー」の企画・運営に携わった者として非常に感慨深いものがあります。当時はこれほど長く続くイベントになるとは想像もしませんでした。
1992年に兵庫県庁周辺で5月に開催された「花と緑のまちづくり国際シンポジウム&‘92ひょうごまちなみガーデンショウ」が第1回目で、翌年以降、「ひょうごまちなみガーデンショー」として引き継がれました。第2回目までの花と緑の演出は、県庁周辺の会場に見本花壇やコンテナガーデンを運営側で設置し、県民の方々に花と緑の空間を体験して頂く、というものでした。
大きく方向転換し、ガーデンショーの長期継続の要因になったと考えられるのが第3回目から始まった「ガーデンコンペ・ひょうご」です。大阪の百貨店で毎年開催されていた「フラワーフェスティバル」を始め、当時の園芸の展示会は通常、屋内展示でしたので、実際の庭を想定した屋外での展示は画期的な試みだったと言えます。兵庫県内外の造園・園芸関係の企業やガーデンクラブ等の住民団体などから計31団体の出展がありました。ガーデンコンペの開催により会場内の花と緑の量が格段に増し、「ガーデンショー」という名前にふさわしい催しになりました。翌1995年は阪神・淡路大震災によりやむなく中止となりましたが、1996年からはガーデンコンペに「コンテナ・ハンギング部門」を加え、個人の方々にも出展して頂けるようになりました。
その後、会場や開催時期を変えながらも毎年開催され、昨年度のガーデンコンペではコロナ禍の中、ガーデン部門計237点の出展があったとのこと、私が携わっていた初期の頃とは比較にならないほど大規模なイベントに発展しました。兵庫県民の花と緑に対する意識の高さ、県民の方々が様々な形で参加できる仕組み、主催者の方々の部局を超えた連携が継続の鍵だったのではないかと思います。
「ひょうごまちなみガーデンショー」の名称には私たち一人ひとりが身近な花や緑を増やすことにより、兵庫県下のまちなみや地域の景観がより良くなるように、という思いが込められています。また、明治・大正時代の建築物である兵庫県公館と神戸栄光協会(震災により倒壊)を含む県庁周辺のまちなみと花や緑を融合させた快適な空間を提案し、来場者の方々に体感して頂くことが当初の目的でしたので、「まちなみ」の語が入っているのです。
建築と花や緑の融合は美しいまちなみ景観の形成に欠かせない要素といえます。「ひょうごまちなみガーデンショー」の盛況にも表れているように、県民の方々の花と緑に対する理解は深まりました。一方、建築設計と景観設計を両方できる人材は少なく、ハード面の課題が残っています。折しも、2020年に建築と景観の一体的な設計が学べる景観建築学科が武庫川女子大学に開設されました。この日本初の学科が兵庫県内にできたのも偶然ではない気がしています。時を経て30回目の「ひょうごまちなみガーデンショー」では教員として学生達とガーデンコンペ出展を目指しています。

花緑センターだより(公財)兵庫県園芸・公園協会 花と緑のまちづくりセンター 令和4年7月 61号より